KPIの悪用の例(宮城県の壇蜜さん動画)

 

[壇蜜さん観光PR動画 奥山恵美子・仙台市長「配慮に欠ける」 村井嘉浩・宮城県知事「おかげでアクセス急増」]

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170718-00000549-san-soci

 

上記ニュースに出てくる村井宮城県知事の話を見て驚きました。

 

【今回の観光PR動画について、「(過去に)資料を作ったら『こんなの誰も見ない』というから面白いの作ろうと思って作ったら、『いやらしい』と(言われる)」と有権者の笑いを誘った。その上で「でもおかげさまで(閲覧数が)120万アクセス増えました」と強調した。】

だそうです。

 

しかも、応援している仙台市長選挙の応援演説で。

 

なんというか馬鹿というか恥さらしですね。

 

この動画自体の評価は分かれると思います。

私見を書くと、

・そんなにひどいとも思わない。

・そんなにいい(宮城県に行こうと思う)とも思わない。宮城県ということが記憶に残らない人が多そう。

と感じます。

 

それはそれとして。

 

広報やPR・広告をするとき、いやそもそも何かを成し遂げようと組織がする場合、大切なことは目標をしっかり定め、それに向かった施策を立てることです。

 

KGI・KSF・KPIです。

 

すなわち

・KGI:達成したい目標(例:宮城県の観光客増)

・KSF:KGIを達成するための要因(例:認知度アップ、印象度アップ、〇〇を知ってもらう)

・KPI:KSFを図るもの

です。

 

さらにKPIがKGIになり、その下に別のKPIがあるというツリー構造になることが一般的です。

 

おそらく村井氏は

・KGI:宮城県に観光に行きたいと思う人を増やしたい

・KSF:宮城県の認知アップ

・KPI:広報動画のアクセス数

と考えたのでしょう。

 

KGIとKPIというのはお互いをいったりきたりしないといけません。

 

例えば、プロ野球で優勝を目指す場合

・KGI:より多くの試合に勝つ

・KSF:ミスを減らす

・KPI:エラーの数

としたとしましょう。

 

これ自体は正しいです。

ただ、そのために「打てないけど守備はうまい」選手で固めてしまうと、点を取れなくなり、より弱くなるということありますよね?

こういうことを見るために、KGIとKPIはいったりきたりしながら検証しないといけないのです。

 

今回のケースで言うと何が問題か。

「広報動画のアクセス数を増やす」ということが目的化し、当初のKGIを達成できないからです。

増えた理由はなんですかね?

推測になりますが、「なんか話題になっているから一回ぐらい見ていこうか」という人が増えたからではないですか?

 

そういう人たちが「この動画宮城県のか」「宮城県ってどんなところだろう」と思いますかね?

120万再生のうち半分以下ではないですか?

また、副作用もありますね。

「この動画作るような自治体どうなの?」

そのようなマイナスも考えた場合、本当に「宮城県に観光に行きたいと思う人を増やしたい」を達成できますかね?

 

こういう間違いはデジタルマーケティングではよく起きます。

数字が測れるゆえに数字さえ達成すればいいとなるのです。

 

【炎上マーケテイングでしか話題を取れないのか?】

そんなことないですね。

自治体で言えば、数年前に岡山県が観光用ウェブサイトを作った際に古いデザインから新しいデザインに進化させる方法で話題を取りました。

高知県の「高知家」も話題を取っていますよね。

あれなんかは実際行ってみてもそのブランドが浸透していて効果が出ているように思います。

 

つまり、しっかり手法を考えてやれば効果は出るのです。

 

また、香川県が「うどん県」ということで広報・広告して成功していていますね。

そう、こういう「らしさ」が必要なんです。

 

・人選の問題

壇蜜さんは秋田県の横手市出身ですが、秋田県出身って知っている人多いですよね。

そういう人を使ってはダメです。

高知家の場合、高知県出身の広末涼子さんを起用しています。

地域色が強い人を他の地域が担ぐのは勘違いも生むのでだめです。

しかも、宮城県と壇蜜さんどこがかぶりますか?

 

・ネタの問題

牛タンというネタも使ったようですが、これもダメと思います。

「牛タン食べに宮城県行きますか?」

行かないですよね。

「宮城県いった人の中で牛タン食べる人の割合は増える」かもしれません。

先日九州に行った際に呼子にイカを食べに行きましたが、新鮮さが命でどこでも食べられないものですから効果があります。

また、そこにしかないもの、例えば伊勢神宮のような建物ならわかります。

牛タンはどこでも食べれますし、それだけのために行くようなものではないですよね?

 

「うどん県」というほど生活に密着もしていません。

 

「宮城県=〇〇、だから行こう」というネタが必要なんです。

海でも山でもいいですが、そういう印象を与えないと。

 

例えば、富士山や浜名湖がある静岡県、湖国滋賀県という感じです。

宮城県は東北6県の中でも海側から山側までの距離が狭く、移動しやすいですから、県としてのブランディングはできるはずです。

それに沿ったネタになっていない。

 

・動きがとれない

 

また動機づけしたら「じゃあ行こう」となるわけですから、そこからの動きをサポートする必要があります。

それも感じられない。

 

 

宮城県知事だけが「120万再生したじゃないか」と言っているならまだいいですが、

県の職員や動画を作った会社はどう思っているんでしょうか?

「再生数があればいいというもんじゃないよ」と思う人がいれば上の人に対してであれしっかり意見をしてほしいものです。

 

 

 

まあ、個人的にはセミナーや講座で使うネタができてよかったです。(笑)

「KPIが独り歩きする悪い例」としてしばらく使おう。